今回の話題は、発明・発見の本質を考えることになります。

問題解決型のアイディアではなく、

単に思いついたという特許も実はあるのです。

この方が難しいし発見という意味では、発明の本質とも言えるのではないでしょうか。事実、このような特許は非常に少ないと思います。自らのアイディアで、自ら発掘した技術というものはすばらしいもの だと思います。このような、アイディアを見つけた人は本当に幸せなのではないでしょうか。

私の経験で、40~50件の特許をかきましたが、純粋のアイディアから出発した特許は数件です。

どのようにして、こういったアイディアを見つけるかの一般的手法はないといえるでしょう。発見的なものですから、いつか、あるとき何かの拍子で見つけるといったものなのでしょう。

しかし、発見的といっても、このようなアイディアに遭遇するための必要条件というか環境というものにはどうやら共通するものがあるようです。先人たちのすばらしい発明家たちの発見に至る状況を書物で読んでみると次のような事実が浮かび上がってきます。

これらの①~③は、本当か?何か物の本に書いてあることを真似事で言っているのではないか?と思われる諸兄もいるかもしれません。

そこで、私の研究生活で経験した事実を述べます。実体験ですから、上のことを本当に経験しているということです。(ただし、実体験していることと、これを汎用化して皆様に同様な体験ができるかどうかということには、隔たりがあるとおもいます。その意味では、参考でしかありませんが)




私は、当時(28才ぐらいであったとおもいます)の研究テーマで磁気媒体の記録に関する研究をしておりました。
記録された信号のS/N(信号対ノイズ)比を測定しておりました。ノイズ測定にはあまり良い方法が無いなという
漠然としたものがありました。

ご存知の方も多いと思いますが、ノイズは一般にランダムであり、指数関数の分布をしております。 その波形を
見ようということで、シンクロスコープで信号を拡大してノイズ信号を見ておりました。シンクロ スコープのブラウン
管には信号が水平になって、その周りにボワーっとノイズが広がっています。ノイズが 大きい場合にはそのボワ
ーが信号に対して垂直方向に大きく広がってくるのです。

ここまでは、ごくあたりまえのことです。私は、実験室で一人じっとその信号を見つめていました。確かに、 後から
思えば、一人静かに何かに(この場合は、ノイズ測定)夢中で考えようとしておりました。(この辺の 過程は上の①
から②です)

シンクロスコープの調整ダイヤルを動かしては、信号を上下に動かしたりしておりました。ふと、面白半分 といって
は何ですが、同じ信号を同軸ケーブルを分岐してもう一つの入力に入れ(通常、シンクロスコープ は複数の信号
を同時に見れるように入力の口が複数あります)、同時に見てこれをまた、上下に動かして みておりました。

もう一つの信号も同様に、信号を中心に垂直方向にボワーっと広がっているのです。なんのことはありま せん。

が・・・、そのとき、“ふと気が付いた”のです・・・。(これが発見の現場!)

垂直方向にボワーっと広がっている二つのノイズ信号を接近させると、ふたつの間の信号の輝度は寄せ集 められ
ることによって、輝度が重なり合うわけです。当然のことといえば当然ですが、でも、ここに大きな 発見があったの
です。重なり合うと今までは指数関数的な信号は足し算されて輝度が均一になるところが あることに気づいたの
です。


図がうまくかけませんが、上の図では左が一つ一つの信号を中心として縦軸に輝度を示したもので指数関数で
ノイズが広がっているイメージを表しております。右はこれが重なり合って山と山の間で輝度の和が 平坦になる
瞬間を示したものです。この平坦になる部分は二つの信号を離して見るとくぼみが生じ気とは 平坦にならなくな
ります(図の下左の場合)。また、寄せすぎると(図の下右の場合)、今度は山が生じてくる ことになることが容易
に想像できると思います。

このことに気づいたときには非常に驚きました。感動といっても良いでしょう。世界で、私一人しかこのこと に気づ
いていないのではないかと思いました。静かな実験室で、私は多分声をあげて喜んだと思います。


さて、発見に伴う私の経験談はここまでにしましょう。自慢話になってもしかたありません。でも、
この発見を特許にすることに問題がありました。これこそ、この講座のテーマであり皆さんに参考
になることではないかと思うのです。事実、この技術は特許にならなかったのです。今思い出して
も残念だなと思ったのです。すばらしい発見だと自負しているのですが。

実は特許に至るまでには、実用的には何の効用があるのかという大きな障壁が待っているので
す。特許とアイディアの障壁です。

次回は、なぜ、特許にならなかったのか。まずい、特許の書き方ということのヒントにもなると思い
ます。

ということで、続きは次の講座の話題にしたいと思います。

to be continued: 第4回 前回のアイディアが特許に至らなかった実例の続き >>>