今回の話題は、またまた、特許作成における失敗談です。

の講座の狙いは実務をベースにした話題は、必ずや皆様の役に立つと思ってお話を進めて います。失敗といっても、失敗は成功の元といいます。成功談を語るのはある意味で、皆様 の参考にならない面があるのでしょう。成功はなるべくして成功しているのだと考えると当然 の結果として成功があるのでしょう。成功から教えられることは少ないとも言えるのではない でしょうか。むしろ、失敗談の方が、皆様も多分陥りやすいでしょうし、また、失敗を分析する ことは、必要なことであろうかと思います。ぜひ、皆様の参考になればということです。

今回の失敗の話題は、『特許とビジネス』との関係のお話しです。

さて、対象となった特許の概要から説明します。それは、技術的な用語としては

というものに関する特許です。

この特許は、NTTの研究所にいた時代に部下であったM氏(現在、NTTソフトウェア)と共同の特許でした。当時、私たちは衛星通信を利用したデータ通信への応用について研究しておりました。HDCLを超ロングパケットで送った場合のデータ誤り率などの検討を主におこなっておりました。研究成果として特許を書こうということになり、思いついたのが、衛星回線のダウンリンクを広帯域で送り、対応する制御信号は帯域が狭くて十分ですので、地上回線を使って送るという通信効率を高くする通信方式です。当時は非対称ネットワークという言葉はありませんでした。

特許を書いて、出願はしました。数年後、この出願を特許にするかどうかの判断が上部(知的財産を管理する部門)から降りてきました。宮村氏と相談し、特許化しないでおきました。いわゆる防衛特許(他社から同様な特許が出るのを防ぐという意味の特許)で十分だと判断したからです。いまや、非対称ネットワークはブロードバンド通信の常識です。これを特許にしておけば、良かったと、M氏からある席上でいわれ、悔やみました。大金持ちになったかも?あるいは大きな成果になっていたかも...?でも、後の祭りというものです。


さて、この場合、問題は何だったのでしょうか?

原因を分析すると次のような項目が挙げられます。

この特許は現実のビジネス上必要とするものではないと判断したからです。要するに、(ビジネスを進める上
での)問題解決型の特許ではなかったということです。

上の事例でのもっとも本質的なことはブロードバンドのニーズが特許を考えた時期から約20年近くたってか
ら発生してきたということで、このため、判断を誤ったということです。

このことは、非常に難しい問題を含んでいるということになります。将来のニーズを的確に判断して必要性を
認識し、その必要性にかかわる技術的な問題点を想定し、この解決を図るという特許を作るということがビジ
ネスに結びつく特許ということになる。という結論になってきます。


よく考えてみると、現実のあるいは直近で現れている問題点は誰でも気がついておりますの で、問題解決の方策を誰もが考えます。このような場合の特許は、とにかく早い者勝ちというこ とですが、先取りは難しいことになります。)

いっぽうで、将来発生するかもしれない問題点を見出すということについては、豊かな発想が 必要であるということになりますので、このこと事態が困難であるともいえます(天才は別でしょ うが)。

次回は、そろそろ、シーズオリエンテッドな発想に基づく特許ではなく、ニーズ指向の特許につ いて述べましょう。この場合の問題点は何なのか。さらに、深い検討課題を提示します。


to be continued: 第7回 特許を如何にビジネスに結びつけるか >>>